2024年5月末、コンピューター支援言語学習(CALL)の専門家たちがピッツバーグに集結し、テクノロジーを活用した言語学習と教育の発展を目的とする年次イベント「CALICOカンファレンス」が開催されました。

CALICOは、アメリカで毎年開催されている最大規模のテクノロジーと言語学習に関する学会で、最新の研究成果が発表される場として広く知られています。IMMERSEも、これまで多くの大学との研究連携をこのカンファレンスを通じて築いてきました。
今年の開催校は、VR教育分野の先進的な取り組みで知られる名門カーネギーメロン大学でした。
IMMERSEのリサーチディレクターTricia Thrasher博士は毎年、語学教育における教育テクノロジーの可能性をともに探求する仲間たちと再会できるこの機会を、心から楽しみにしています。
今年のCALICOカンファレンスでは、「融合とつながり:CALLにおける産業界と学術界の架け橋」というテーマが掲げられ、IMMERSEにとって非常に意義深いイベントとなりました。
この貴重な機会にあたり、スラッシャー博士には、IMMERSEのカリキュラム責任者であり、現在博士課程でテクノロジーを活用した語学学習の効果について研究を進めているCarla Consoliniが同行しました。

1. CALICOカンファレンスでのIMMERSEの取り組み
今年のCALICOカンファレンスでは、IMMERSEと連携する多くの研究パートナーが登壇し、IMMERSEの学習効果に関する研究成果を発表しました。登壇者には、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校、バルセロナ自治大学、カリフォルニア大学サンタバーバラ校、ノーステキサス大学、ジョージア大学、慶熙大学校など、国内外のさまざまな大学に所属する研究者が含まれていました。それぞれの研究チームが、IMMERSEとの共同研究を通じて得られた知見を紹介しました。
また、Tricia ThrasherとCarla Consoliniも登壇し、IMMERSEでの実践に基づいた研究を発表しました。発表では、VRが語学学習に与える影響や利点について、専門的な視点から詳しく解説が行われました。
さらに、研究パートナーおよび社内チームは、パネルディスカッションの主導やワークショップの開催、VR語学アプリの展示を通じて、バーチャルリアリティが語学学習にもたらす効果について、最新の知見を広く発信しました。特に、VRが学習者の会話力をどのように高めるかという点に焦点が当てられ、多くの参加者が関心を寄せていました。
2. ワークショップ:没入型リアリティの探究 — 低没入(Low-Immersion)・高没入(High-Immersion)・複合現実(Mixed Reality)の比較
CALICOカンファレンスでは、毎年、公式な開始日前日にワークショップが開催されます。今年は、IMMERSEの研究パートナーであるRandall Sadler博士(イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校)が、語学教育におけるVRの活用をテーマにした3時間のワークショップを実施しました。
このワークショップでは、参加者がバーチャルリアリティの教育的効果について学び、VRヘッドセットを実際に使いながら、語学学習に応用できるさまざまなアプリケーションを体験しました。
なかでもIMMERSEは、ライブ授業に特化して設計された唯一のVRアプリであることから、大きな注目を集めました。多くの参加者がその使用感をじっくりと確かめ、実際の授業にどう取り入れられるかについて、活発に意見を交わしていました。
また、Tricia Thrasher博士もこのワークショップに参加し、IMMERSEのデモンストレーションを行いました。彼女は参加者からの質問にも丁寧に対応し、IMMERSEの実践的な活用方法について理解を深めるサポートを行いました。

3. パネルディスカッション:VR・バーチャル交流・ゲームを活用した研究手法
カンファレンス初日の朝、Tricia Thrasher と Carla Consolini が登壇し、「CALL(コンピューター支援言語学習)環境における適切な研究の進め方」をテーマにしたパネルディスカッションでイベントの開幕を飾りました。
この分野の研究では、特にデータの収集や分析においてさまざまな課題が生じることがあります。
両名はそれぞれの専門的な視点から、IMMERSEでの研究を通じて、こうした課題にどのように取り組んできたのかを具体的な事例を交えて紹介し、参加者に実践的な知見を共有しました。

4. プレゼンテーション: 多言語学習者を支援するために ― 高没入型VRが外国語不安に与える影響とは
Our Research Partners Eunkyoung Elaine Cha and Zheying Zhu from the University of Georgia presented findings from their study measuring the impact that using IMMERSE has on university students’ foreign language anxiety levels.
研究パートナーであるジョージア大学の Eunkyoung Elaine Cha と Zheying Zhu は、IMMERSEの使用が大学生の外国語学習に対する不安感にどのような影響を与えるかを測定した研究結果を発表しました。

この研究では、ジョージア大学のインテンシブ・イングリッシュ・プログラム(IEP)と連携し、IMMERSEを活用してESL学習者に追加のスピーキング練習の機会を提供しました。
その結果、IMMERSEでわずか4回のレッスンを受けただけで、学習者の外国語不安(FLA)が31%も軽減されたことが明らかになりました。
また、VRアクティビティの高い没入感と楽しさにより、学習体験全体への満足度が21%向上するという効果もデータから確認されました。
5. プレゼンテーション:没入型会話AIが移民学生の第二言語運用に与える影響
研究パートナーであるUliana Ovsiannikova(イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校)は、自身のTESOL修士論文の研究成果を発表しました。
この研究では、英語レベルが初級の難民の高校生36名を対象に、6週間にわたって調査を行いました。
学生たちは毎週、IMMERSEのAIボットと20分間のスピーキング練習を行い、その効果が検証されました。

Ovsiannikovaは、IMMERSEを用いた会話練習が、学習者の「英語で話そうとする意欲」や「スピーキングの流暢さ」にどのような影響を与えるかを検証しました。
その結果、IMMERSEをわずか1.5時間使用しただけで、英語で話そうとする意欲が19%向上し、AIとの会話中の発話量は49%も増加したことが明らかになりました。
こうした結果は非常に注目され、彼女の発表はカンファレンスの中でも特に多くの参加者を集めたセッションの一つとなりました。
6. ショーケース:XRで広がる現実 ― バーチャルスナックとリアルスナックを一緒に楽しもう
語学学習におけるVR活用に関するワークショップに加えて、Randall Sadler博士は数名の大学院生とともにテクノロジーショーケースを企画し、カンファレンス参加者が IMMERSE を実際に体験できる機会を提供しました。

CALICOのテックショーケースは比較的カジュアルな形式で行われ、カンファレンス中のディナータイムに開催されます。このショーケースは、参加者が教育現場で活用できるテクノロジーソリューションについて、リラックスした雰囲気の中で気軽に学べる機会を提供することを目的としています。
7. パネルディスカッション:実践例から考える、VRがもたらす言語・異文化教育への可能性
In one panel, three of Immerse’s Research Partners (Dr. Regina Kaplan-Rakowski (UNT), Dr. Randall Sadler (UIUC), and Dr. Melinda Dooly (Autonomous University of Barcelona), shared their thoughts on the potential of VR. This panel arose from the fact that many Higher Ed stakeholders are still skeptical about adopting VR technology due to the high financial cost.
あるパネルディスカッションでは、IMMERSEのリサーチパートナーである Regina Kaplan-Rakowski博士(ノーステキサス大学)、Randall Sadler博士(イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校)、Melinda Dooly博士(バルセロナ自治大学)の3名が登壇し、VRの可能性についてそれぞれの見解を共有しました。
このパネルは、VR導入に対して未だ慎重な姿勢を示す高等教育関係者が多いという現状を受けて企画されたものであり、特に導入コストの高さが懸念材料として挙げられていることが背景にあります。

パネルディスカッションでは、IMMERSEの研究パートナーたちが、VRを語学教育に効果的に活用した具体的な実践例を紹介しました。それぞれの登壇者が、どのように学生とともにIMMERSEを活用してきたかを詳しく共有し、VRによる学習効果や教育的価値についても多角的に共有しました。
8. プレゼンテーション:遊びながら学ぶ ― IMMERSEにおける没入型VR(iVR)活用
リサーチパートナーである Sangmin Michelle Lee博士(慶熙大学) も、IMMERSEに関する最新の研究成果を発表しました。彼女の研究では、英語初級レベルの学習者25名を対象に、IMMERSE内で全6回・各45分間の英語レッスンを実施しました。
データの分析から、IMMERSEで学習している間、学生たちは高い集中度を維持しており、それが学習成果の向上につながっていることが明らかになりました。具体的には、IMMERSEでの学習時間のうち97.5%を学生が積極的に活用しており、プレテストと比較してポストテストでは英語のスコアが133%向上するという結果が得られました。

9. パネルディスカッション:語学学習におけるVRの効果を再検討する
Two of IMMERSE’s Research Partners, Dr. Justine Meyr (University of California, Santa Barbara) and Dr. Randall Sadler (University of Illinois at Urbana-Champaign) spoke on another panel that focused on discussing how to maximize the potential of VR for language learning. The goal was to showcase projects that take advantage of the affordances of VR to create meaningful learning opportunities. Dr. Meyr spoke about the work going on in California for Immerse’s Meta Grant Project.
IMMERSEの研究パートナーである Justine Meyr 博士(カリフォルニア大学サンタバーバラ校)と Randall Sadler 博士(イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校)は、語学学習におけるVRの可能性を最大限に活用する方法をテーマにした別のパネルディスカッションで登壇しました。このセッションでは、VRの特性を活かして、学習者にとって意義のある学びの機会を生み出しているプロジェクトを紹介することが目的とされていました。Meyr 博士は、カリフォルニアで進行中の IMMERSE の Meta Grant Project における取り組みについて紹介しました。

Sadler博士は、自身が実施した研究について紹介しました。この研究では、30名の語学教師にインタビューを行い、VRアプリが語学教育において最も効果的であるために必要だと感じる要素について調査しました。博士は、インタラクティブな環境、事前に構築されたシーン、教師によるコントロールなど、11の重要な機能を挙げ、IMMERSEがこれらすべての要件を満たしていることを強調しました。
10. プレゼンテーション:「イリノイにいるスペイン語話者と話せるのがうれしい」―VRでのAIロールプレイに対する学生の印象
IMMERSEのリサーチディレクターであるTricia Thrasher博士と、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のUliana Ovsiannikova氏が、同大学で昨年度進行していた研究プロジェクトについて共同発表を行いました。
この研究では、IMMERSEのAIアバターとの会話が、スペイン語およびフランス語を学ぶ高校生にどのような影響を与えるかを検証しました。学生たちは、1学期を通じて授業中にAIによるロールプレイに取り組み、各ロールプレイの後にはタスク後評価を行い、毎回アンケートに回答しました。

調査の結果、学生たちはAIアバターとの会話が学習に良い影響を与えていると感じていることが明らかになりました。会話中は自信を持って取り組めた(87.5%)、リラックスできた(87.0%)と回答しており、新しい語句や文を学ぶのにも役立った(87.9%)と評価されました。
11. プレゼンテーション:大規模VR支援型言語学習研究の実施に向けて
この1年半にわたり、私たちは助成金によって実施されているMeta Research Projectのもと、リサーチパートナーのチームとともに研究を進めてきました。本プロジェクトでは、イリノイ州、テキサス州、カリフォルニア州の高校にVRヘッドセット500台を配布し、それらをIMMERSEと併用することで学生の言語学習がより効果的になるかどうかを検証しています。

本プロジェクトは、これまでで最大規模のVR言語学習プロジェクトです。従来の多くの研究は、教室内でのVR機器の導入・運用が困難であることから、少人数のサンプルに依存してきました。
そのため、本プレゼンテーションでは、このような大規模プロジェクトを円滑に進めるための工夫やポイントの共有に焦点が当てられました。登壇者は、VR機器の効果的な管理に加え、教師および生徒へのVRトレーニングを含む、大規模プロジェクトを実施するために必要なステップを順を追って紹介しました。
12. パネルディスカッション:デジタルの融合 ― CALL環境におけるVRとAIの統合
カンファレンスの締めくくりとして、Tricia Thrasher博士とCarla Consoliniが、VRを活用した言語学習におけるAIの実践的な活用について議論するパネルディスカッションに参加しました。このパネルでは、IMMERSEおよびImmerseMeの業界専門家を迎え、生成AIがこれらのプラットフォームにどのように統合され、学習成果の向上に役立てられているかが取り上げられました。

Thrasher博士は、IMMERSEにおけるAIの活用方針について紹介し、AIがどのようにしてクラスでのライブ指導を補完しているかを説明しました。また、AIに関連するデータを通じた研究目標や、IMMERSEにおけるAIの将来像についても語りました。さらに、参加者に対してAIとの会話デモを行い、会場となったピッツバーグに関する内容について、AI会話パートナーが自然な応答を返す様子を紹介し、好評を得ました。
IMMERSEとは
IMMERSEは、学習者がより早く、効果的に言語を習得できるよう開発された、VRを使った言語学習サービスです。バーチャル・リアリティやAI(人工知能)、個別の指導を組み合わせることで、これまでにない新しい学習体験を提供しています。
IMMERSEの導入に関心がある方はwww.immerse.com にて詳細をご覧いただき、専用フォームよりお問い合わせください。
